役員に社宅などを貸した時

例えば東京に自宅のあるとある役員が、業務の都合上、地方の事業所に勤務する、というような場合が想定されます。

 

会社が家主と契約し、賃料を支払ったうえで、その役員からは一定額の負担金を収受する、というのが一般的な考え方だと思いますが、ここでその負担金をいくらに設定すればよいのか、というのがしばしば問題になります。

 

問題になる、というのは法人税法上の問題で、会計上は、きちんと内規に則った金額を収受していれば、大きな問題にはなりません。

 

そこで、税法上はつぎのような規定があり、国税庁HPのタックスアンサーにも記載があります。

 

まず、役員に貸与する社宅が小規模か否かで、役員が負担すべきと考えられる「賃貸料相当額」の取り扱いが異なるので、まずは小規模な住宅の定義から確認します。

 

◆小規模な住宅

 耐用年数が30年以下の建物 床面積が132平方メートル以下

 耐用年数が30年超の建物  床面積が99平方メートル以下

 

概ね鉄筋コンクリートのマンションだと99平方メートル以下、木造住宅だと132平方メートル以下、アパートなんかだと造りの頑丈さで変わってくる、という感じでしょうか。

 

で、上記の小規模な住宅に該当する住宅を役員に貸しつけた場合、次の計算式で計算された賃貸料相当額を役員から負担してもらわないと、役員個人に低額で住宅を貸し付けたものとして、所得税の問題が発生します。

 

賃貸料相当額=下記(1)+(2)+(3)

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))

(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

・・・え、実務的にそんなことやってるやつおらんやろ・・・というのが正直なところで、まあ通常はこの規定に照らしても、概ね安全と思われる一定の率を算出したうえで、みなさん一律に負担してもらう、ということになると思います。

 

では、その「安全と思われる一定の率」をどの程度にすれば良いのかを、今回は試しに算出してみたいと思います。

 

ここで、下記を前提条件とします。

 

年額家賃=X

(建物+土地)の固定資産税課税標準額=(建物+土地)の取得価額=Y

実質利回り=0%(あえてゼロにしてみます)

耐用年数47年(鉄筋のマンションです)=賃貸用として貸し出す年数

 

こうしてみると、当然大家さんとしては、取得価額のYを47年かけて家賃収入で稼がなければいけませんから、年額の家賃は次の通りに算出されます。

 

年額家賃(X)=(Y÷47年)

 

この年額家賃(X)に対し、役員個人に負担してもらうべき負担率をどの程度にすれば、負担額と税法上の賃貸料相当額が大体均衡するのか?というのを、めちゃくちゃ乱暴に算出すると、次のような感じになります。

 

(Y÷47年)×(役員個人の負担率)=Y×0.42%

 

(役員個人の負担率)=19.74% 

 

まあ、大体20%です。

 

土地建物の課税標準額を合算したものをYとしてるし?建物に0.2%で?土地に0.22%なら?まあ大体こんなもんじゃね?12円×うんぬんっていうのは無視してもいいっしょ?というくらいの感覚です。

 

実際には家主の利回りも考えますが、数%の利回りなら、この計算上はあんまり関係ありません。

 

また、耐用年数というか、実際に使用する年数として47年とか設定している家主は少ないと思うので、30年で計算すると、負担率は12.6%になります。

 

そういう意味では、役員へ社宅を貸すようなケースがあれば、概ね家賃の20%くらいを負担しておいてもらえば、まず問題にはならないと、個人的には思います。

 

小規模でない住宅の場合は、面倒くさくなってきたのでご自身で確認してください。

 

なお、役員報酬は定期同額給与の他、一定の要件を満たすもの以外は損金にもなりませんので、会社が払う家賃そのものが、損金不算入とされるケースも考えられます。

 

個人課税に損金不算入などが絡むと、実に面倒なことになりますので、詳しくは最寄りの税務署、または顧問税理士にご相談下さい。

 

当ブログの内容は、あくまで素人である筆者の私見です。